中小企業のためのGemini・NotebookLM入門(1)— ふだんの仕事道具の中で、AIが動く
Geminiは、すでにあなたの会社が使っているGmailやドキュメントの「中」で動くAIだ。NotebookLMは、自社の資料だけを読み込ませて答えさせる、出典つきの調べもの専用AI。
GoogleのAI、GeminiとNotebookLMを、同じ実用視点で十回かけて見ていく。第一回は、この二つが何者で、何が他のAIと違うのかを、像が結べるまで丁寧に整理したい。なお、料金や機能は変わりやすいため、本連載の数字は執筆時点(2026年6月)のものとして読み、契約前には必ず公式の最新情報を確認してほしい。
「もう一つのAI」を知る理由
中小企業の経営者と話していると、「ChatGPTかClaudeは聞いたことがあるが、Geminiは何が違うのか」「NotebookLMという名前を見たが、見当がつかない」という声をよく聞く。
理由ははっきりしている。GeminiとNotebookLMは、AIの中でも「立ち位置」が独特だからだ。多くの汎用AIが「白紙のチャット画面に質問を打ち込む」道具であるのに対し、Geminiは「すでに使っているGoogleのサービスの中に溶け込んで助けてくれる」道具であり、NotebookLMは「資料を読ませて、その中身について答えさせる」AIだ。
この違いを理解せずに「どれが一番賢いか」だけで比べると、選択を誤る。大切なのは、自社の働き方にどの道具が噛み合うかだ。そして、すでにGmailやGoogleドキュメントで日々の仕事を回している会社にとって、GeminiとNotebookLMは、想像以上に自然な選択肢になりうる。
Geminiとは、ひとことで言うと
Geminiは、Googleが開発した生成AIだ。
最大の特徴は、Googleのサービスと一体で動くことにある。Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシート、Googleスライド、Googleドライブ、Google Meet。こうしたふだん使うアプリの画面の中に、Geminiが組み込まれている。
たとえばGmailを開けば、その画面の中でメールの下書きや要約を頼める。ドキュメントを書いていれば、その場で文章を整えてもらえる。Google Meetの会議では、議事録の作成や要約を任せられる。わざわざ別のAIの画面を開いて、内容をコピーして貼り付ける——その手間が、ほとんどいらない。
これが、独立したチャット型のAIと比べたときの、Geminiのいちばんの強みだ。ふだんの仕事の動線の中に、AIが最初から座っている。
Geminiには、単独で使えるチャット用のアプリやウェブ版もある。スマートフォンのアプリもあり、こちらは独立したAIアシスタントとして、質問への回答、文章作成、要約、調べものなどに使える。会社の業務ではWorkspace連携で、個人的な用途ではアプリで、という両方の入り口がある。
裏側で動くAIモデルも進化を続けている。2026年に入ってからは、複雑な推論を得意とするGemini 3.5 Thinkingという上位モデルが登場し、日常的な処理にはより軽快なモデルが、込み入った問題にはこの上位モデルが使われる、という形が公式に案内されている。
NotebookLMとは、ひとことで言うと
NotebookLMは、同じくGoogleが提供するAIだが、役割がまったく違う。
ひとことで言えば、「自社の資料だけを読み込ませて、その中身について答えさせる、調べもの専用のAI」だ。
使い方はこうだ。まず、自分が持っている資料をアップロードする。PDF、Googleドキュメント、テキスト、ウェブサイト、YouTubeの動画など、さまざまな形式の「ソース(情報源)」を登録できる。すると、NotebookLMはその資料の中身を深く読み込む。あとは、その資料について自由に質問できる。「この契約書で注意すべき点は」「このマニュアルのうち、新人が間違えやすいところは」といった具合に。
汎用AIとの決定的な違いは、答えが「読ませた資料の中」から返ってくることだ。NotebookLMは、世の中の一般知識で適当に答えるのではなく、あなたが渡した資料を根拠に答える。しかも、答えのどの部分がどの資料のどこに基づいているかを、出典として示してくれる。
これは、AIの弱点とされてきた「もっともらしい嘘(事実と違う回答)」を抑える仕組みでもある。根拠が示されるので、答えが信用できるかを自分の目で確かめられる。社外秘の資料や、自社だけの大量の文書を扱う仕事で、この性質はとても効く。
二つの音声・動画機能が、注目を集めた
NotebookLMが世界的に話題になったのは、二つのユニークな機能のためだ。
ひとつは「音声概要(Audio Overview)」。読み込ませた資料をもとに、二人のAIが会話する形のポッドキャスト風の音声を自動でつくる機能だ。機械的な読み上げではなく、二人が掛け合いながら要点を解説してくれるので、まるでラジオ番組を聞くように内容を理解できる。分厚い資料を、移動中に耳で把握する、といった使い方ができる。日本語を含む多くの言語に対応しており、英語版と同じくらい充実した内容になるよう改善が進められていると案内されている。
もうひとつは「動画概要(Video Overview)」。こちらは音声に視覚的なスライドを組み合わせ、ナレーション付きのプレゼンテーション動画のような形で資料を解説してくれる機能だ。2026年には多くの言語に対応が広がったと案内されている。
このほかにも、資料を一枚の図にまとめるマインドマップ、要点を整理したレポート、スライド資料、インフォグラフィック、学習用のクイズなど、読み込んだ資料を多彩な形に変換する機能が、Studioと呼ばれる場所から使えるようになっている。
二つは、どう使い分けるのか
ここで整理しておきたい。GeminiとNotebookLMは、Googleが提供する点では同じだが、役割が違う。
Geminiは、Gmailやドキュメントなど、Workspaceのアプリ全体にまたがって動く「万能の作業アシスタント」だ。メールを書く、文章を整える、会議を要約する、調べものをする——日常の幅広い仕事を、ふだんの画面の中で助けてくれる。
NotebookLMは、アップロードした特定の資料を深く読み込み、その内容に特化して答える「専用の研究アシスタント」だ。大量の社内資料、契約書の束、過去の議事録、業界レポートといった、まとまった文書群を相手にするときに本領を発揮する。
おおまかには、日々の作業全般はGemini、特定の資料を深く扱う調べものはNotebookLM、と覚えておくといい。そして、この二つは組み合わせて使える。実際、NotebookLMで作ったノートを、Geminiのアプリから情報源として参照する、といった連携も可能になっている。
どんな会社に、特に向いているか
GeminiとNotebookLMが特に効くのは、次のような会社だ。
第一に、すでにGoogle Workspace(Gmailやドキュメント)で仕事が回っている会社。この場合、Geminiは追加の道具を増やすのではなく、いま使っている画面の中で使える。学習コストが小さく、定着しやすい。
第二に、扱う資料が多い業種。士業、不動産、保険、コンサルティング、教育、医療・介護、製造業の技術部門など、文書と資料で仕事が動く業界では、NotebookLMの「資料を読み込んで答える」性質が直接効く。
第三に、Androidのスマートフォンを業務で使っている人。Geminiはスマートフォンとの相性がよく、移動中の活用がしやすい。
逆に、社内がMicrosoftのOffice(Word・Excel)中心で回っている会社では、同じGoogle系のGeminiより、Microsoftが提供するCopilotのほうが噛み合う場合がある。このあたりの使い分けは、連載の後半で改めて整理する。
料金の、おおまかな全体像
料金は変わりやすいので、執筆時点の目安として書く。正確な金額は必ず公式ページで確認してほしい。
個人で使う場合、Geminiには無料で使える範囲がある。無料版でも基本的な対話や文章作成は十分に試せる。さらに使い込むなら、上位の有料プランが複数用意されており、いちばん低価格な選択肢が月額千円台、標準的な選択肢が月額三千円前後とされている。
NotebookLMは、単体で買う商品ではなく、Googleの各種プランに含まれる形で提供されている。無料でも、ノートブックの作成、資料のアップロード、音声概要の生成といった中心機能が使える。無料版には、ノートブック数や一日あたりの利用回数などに上限があるとされている。
法人で使う場合、Geminiの機能は、Google Workspaceの各プランに標準で搭載される形になっている。かつては別料金のアドオンだったが、2025年にWorkspaceの基本プランに統合された、と案内されている。つまり、Workspaceを契約している会社なら、追加料金なし、あるいは小さな上乗せで、Geminiが使えるケースが多い。標準的な法人プランは、一人あたり月額千円台後半とされている。
このあたりの料金とプランの詳しい話は、連載の専用回で改めて掘り下げる。
「データは大丈夫か」という不安に、先に触れておく
新しいAIを業務に入れるとき、経営者がまず気にするのが情報の扱いだ。ここは連載第九回で詳しく扱うが、全体像として先に触れておきたい。
Google Workspaceの法人向けプランでGeminiを使う場合、入力した内容がAIの学習に使われない扱いになっている、と公式に案内されている。人の目による確認や広告への利用も行われない、とされている。つまり、業務でメールやドキュメントの内容をGeminiに渡しても、それが将来のAIの学習材料になることはない、という前提で設計されている。
一方、個人向けの無料アカウントでは、扱いが異なる。原則として対話の内容がモデルの改善に使われる可能性があるとされており、それを望まない場合は、アクティビティの設定を自分で確認・変更する必要がある、と案内されている。
NotebookLMについては、公式のよくある質問の中で、ユーザーのデータが共有されることはない、と説明されている。アップロードした資料が、勝手に他者やAIの学習に使われるものではない、という位置づけだ。
業務で本格的に使うなら、法人向けのWorkspaceで使うか、個人向けで使う場合は学習利用の設定を確認する。この考え方を、まず頭に入れておくといい。
始める前に知っておきたい、二つの注意
便利な道具だが、過信は禁物だ。二つだけ、先に伝えておきたい。
ひとつは、AIの回答は必ずしも正しくない、ということ。Geminiもほかの生成AIと同様、もっともらしく誤った内容を返すことがある。とくに数字、日付、固有名詞、法律や制度に関わる内容は、鵜呑みにせず確認する習慣が要る。NotebookLMは出典を示してくれる分、確認しやすいが、それでも最終的な判断は人が行うべきだ。
もうひとつは、機能や料金が頻繁に変わる、ということ。Googleはこの分野で更新を続けており、モデル名、プラン名、利用上限、対応言語などが短期間で変わる。本連載の情報も執筆時点のものなので、実際に使うときは公式の案内を確認してほしい。
よくある質問
Q. GeminiとNotebookLMは、別々に契約するのですか。
A. 必ずしも別ではない。Geminiの機能はGoogle Workspaceの各プランに標準搭載される形になっており、NotebookLMもGoogleの各種プランに含まれる形で提供されている。すでにWorkspaceを使っている会社なら、追加料金なし、または小さな上乗せで両方に触れられるケースが多い。正確な範囲は契約プランによるため、公式で確認してほしい。
Q. ChatGPTやClaudeをすでに使っています。Geminiも必要ですか。
A. 必ずしも乗り換える必要はない。判断の軸は「自社が普段どのツールで仕事しているか」だ。Gmailやドキュメントが日常の会社ならGeminiが噛み合い、特定の資料群を深く扱うならNotebookLMが効く。汎用的な文章や思考整理は使い慣れたAIで、という併用も現実的だ。使い分けは連載の最終回で整理する。
Q. パソコンが苦手でも使えますか。
A. Geminiは、ふだん使っているGmailやドキュメントの画面の中で動くため、新しい操作を一から覚える必要は少ない。NotebookLMも、資料をアップロードして質問するという流れがわかれば使える。むしろ、白紙のチャット画面に向かうより、見慣れた画面の中で使えるGeminiのほうが、入りやすいと感じる人もいる。
Q. 無料でどこまで使えますか。
A. Geminiにもインボックスの要約や文章作成など無料で試せる範囲があり、NotebookLMも無料でノートブック作成・資料アップロード・音声概要の生成といった中心機能が使える。ただし無料版には一日あたりの利用回数などの上限がある。まず無料で触れて、足りなければ有料プランを検討する、という入り方が現実的だ。
まとめ
GeminiとNotebookLMは、汎用AIとは立ち位置が違う。Geminiは、Gmailやドキュメントなど、ふだん使うGoogleのサービスの中で動く万能の作業アシスタントだ。NotebookLMは、自社の資料を読み込ませて、出典つきで答えさせる調べもの専用のAIで、音声概要や動画概要という独自機能でも知られる。おおまかには、日々の作業はGemini、特定資料の深い分析はNotebookLM、と使い分ける。すでにGoogle Workspaceで仕事をしている会社、資料が多い業種に、特に向いている。
派手な万能AIを一つ選ぶ、という発想ではなく、自社の働き方の中にすっと馴染む道具はどれか——その視点で見たとき、この二つは中小企業にとって有力な選択肢になる。
次回は、Geminiが日々の仕事をどう変えるのか、Gmailやドキュメントの中での具体的な使い方を見ていく。
GeminiやNotebookLMの導入を、現場の隣で一緒に考えてほしい経営者の方は、トレジャーフットAIに一度声をかけてみてほしい。
▶ トレジャーフットAIに相談する
https://treasurefoot.jp/
